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企業倫理

まだオリエンテーション中という事で本格的に授業が始まっている訳ではないんだけど、オリエンテーション期間(2週間)でやっている「企業倫理」という短期コースについてちょこっとご紹介します。

このコースについては、たった2週間で何が学べるのか?そもそも学術的な立場で倫理の理想論について学んでも意味があることなのか? と否定的だった訳なんですよ。

ハイ、確かに企業が倫理的にどうあるべきか?なんて事2週間じゃ学べません。しかも教室の中で議論する事なんて机上論に過ぎません。( ̄-  ̄ ) んーそりゃそうだ・・・

でも、企業倫理というものについて初めて考えさせらて、ちょっとした開眼 (`ロ´;)ハッ! 的体験だった。理数系の私にとって、初の哲学や倫理に触れる授業だったんだけど、すごーくおもしろかった!!!

どんな授業だったのかというとまずは①功利主義(utilitarianism)②カント的思想③ロールズ的思想について学びました。

たった2週間かじっただけなので、幼稚な理解になんだけど、私の捕らえ方は:

①功利主義→「最大多数の最大幸福」というフレーズによってよく知られていて、複数選択肢がある場合、多数派の利益増大を図る(利益と不利益をあわせて総体での利益向上を図る)選択肢を選ぶという思想ですね。

②カント的思想→イマヌエル・カントの思想で、すごく大雑把に言ってしまうと「道徳的原理は人類共通のものであり、人は自らに対しても適応されたいと思う道徳的原理に基づいて行動するべきだ。」というものです。

③ロールズ的思想→ジョン・ロールズというアメリカ哲学者の思想で、「人は『自由』に対して平等的な権利を持っているため、自らの地位や立場を放棄したマインドっセットで平等なルールや原理を築くべき。これらのルールは全人類に平等なチャンスを与え、かつ社会の最も劣位に置かれた人物の福祉を最大化するものでなければいけない」といったもの。

複数選択肢がある場合、各思想ではどう決断するか?という例で話すと・・・
一枚ピザがあったとしましょう。で、太郎・次郎・三郎の3兄弟でこのピザを分ける事になりました。ここでお母さんがきて、「太郎がピザを食べなければ、追加でもう一枚ピザを次郎と三郎にあげるよ。」と誘惑してきた場合:

①功利主義→太郎が我慢して、次郎と三郎は2枚ピザを食べる。理由:太郎がピザを食べる場合は兄弟で合計一枚 vs 太郎がピザを食べない場合は3兄弟で合計二枚 といった事になり、太郎個人はピザを食べれなくても、3兄弟の「総体」としての利益は向上するから。
②カント的思想→お母さんの誘惑に乗らない。理由:道徳原理から見て、太郎は差別されない権利を持っている。次郎も太郎もこの人類普遍的な道徳原理を尊厳するため、太郎が差別を受ける状況は避ける。この際、3兄弟は「もし太郎がピザを食べなければ・・・」など結果論は考えない。3人とも「差別されないという権利を尊重する」事のみを基準に決断する。
③ロールズ的思想→お母さんの誘惑に乗らない。理由:お母さんの誘惑を「誰かがピザを食べなければ、追加でもう一枚ピザを他の二人にあげるよ。」という視点で捉える。この場合3兄弟という「社会」の中の「最も劣位に置かれた人物(=ピザがもらえない人物)」の立場に立ち、お母さんの誘惑に乗った場合この人物への福祉が最大化されないため誘惑にのらない。又、兄弟で一枚のピザを分ける際も「誰がどの取り分をもらえるかわからないから不公平にならないように平等に分ける」という原理の基、きれいに3等分する。

(本当はこんな概要だと全然説明できない程、各思想は細かい論理や原理の上にが成り立っていて、各思想の批判も様々ある訳で深くて面白いです。興味のある人は是非検索してみてください。)

でもって、これらの思想が「企業倫理」に結びつくとこうなるんですね。。。。
①功利主義→企業は社会総体における利益向上を図るべき。
②カント的思想→企業は人類普遍的な道徳的原理に基づいた「権利」を守るべき。
③ロールズ的思想→企業は全ての人に平等なチャンスを与え、かつ、最も劣位に置かれた人物に最大限の福祉を与えるべき。


授業の後半はこれら3つの企業倫理の枠組みを使って、様々な事例を分析しました。

例えばGlaxoSmithKline(GSK)という製薬会社の事例。この会社は「Paxil」というバカ売れの抗鬱剤を出しているのですが、GSKが行った実験によると一部の結果ではこの薬が子供達に投与された場合、自殺願望を引き出す可能性があるという結果になりました。GSKはこの一部の結果について公表せず、イギリスでは医師に「Paxilを子供に処方しないように」という警告のみを出し、アメリカには報告すらしなかったのですね。で、そこで問題になってくるのは「製薬会社は自社が不利になる実験結果を公表する倫理的義務があるのか?」という事なんですよね。

①功利主義→公表すべき。総体な利益向上とは何か?とこれは難しい所なんですが。。。不利であっても全ての実験結果を公表した場合、効き目のない薬や危険度の高い薬を飲んでいる患者の利益アップ、会社としても訴訟問題の減少による利益アップ、、、と考えると総体的に利益向上になるのはこちらのケースだと思います。(但し、不利な実験結果を公表した結果、会社の利益ダウンにつながる可能性が高く、研究費等が削られ製薬の発展を妨げる、、、等の被害が余りに多ければ総体的にみて公表しない方が良いとも考えられる。)

②カント的思想→公表しなくても良い。GSKは「所有権・財産権」という人類普遍的かつ法的に与えられている権利を持っているため、FDAに開示を求められない限りGSKには所有財産である実験結果を公表しない判断をする権利がある。患者側も「薬についての情報を知る」という権利があるが、この権利は「所有件」の様に普遍的かつ法的に既に与えられているものではないため(「勝ち取らなければいけない」権利なため)、権利の優先順位として下。(カント的権利の優先順位付けの枠組みについては様々な批評があるのですが・・・。)カント的思想のおもしろい所は、「実験結果を公表しない結果、どういう影響があるのか?」といった事を考えない所かも。どういう結果になるにせよ、道徳的原理を尊厳するべきだ、と。結果主義より原理主義って事ですよね。

③ロールズ的思想→公表すべき。もっとも劣位に置かれた人物(この場合患者)の福祉を最大化する決断は「薬についてはどんな情報も公開する」ということになる。


結局キレイな答えなんてでないし、思想を学んでも現実問題は色々もっと複雑で理想論通りにいかないのよね。

むずかしぃーーーー
私のちっぽけな頭はフル回転さーーー
<(T◇T)>うぉぉぉぉぉ!!!

なんでしょっぱなから企業倫理なのか?こんな色々な思想を何故いきなり学ぶのか?というと、私が思うには常にこういう事を考えていけるリーダーになっていくきっかけを作るためだと思います。

自分「個人」としての倫理感をきちんと持っている人は多いし、生きている限り色々考えてきた事だと思うけど(少なくとも私の場合)企業倫理について考えたのは今回が初だったな。

「企業がどうあるべきか」という問いに対して自分の倫理や理念を押し付けてはだめだと思うのですよ。なぜならばほとんどの場合、企業の取る行動は株主のお金を使っている訳で、人のお金で自分個人の理念を貫くのはいけませんよね。。。。もっと色々な見方をして、株主のためにも社会のためにも何が倫理的なのか(その答えが例え個人的理念に反していても)を考えないといけないといけない。で、その際にこういう思想もあるんだよ、こうやって分析できるんだよ、みたいな事の触りとして今回の授業があったのかと思います。

企業は決断を下したり行動を取った後に、それを「倫理」とか「社会的責任」とかにこじつけがちだけど、本当は逆に倫理の面から分析して、取るべき行動や戦略を策定すべきなんですよね。

でもそれって難しいよね、、、だって色々あるじゃん。株主からのプレッシャーとかさ、個人財産アップの誘惑とかさ。(;-_-) =3 フゥ

でもそういう風に倫理の面からも少しでも考えていけるビジネスリーダーになりたいよね、、、ってちょびっと思いました。まだ芽生えただけだけどさぁ・・・ヽ(´ー`)ノ

今回は偽善者っぽい(?!)内容でごめんなさい!
でも色々考えさせられるクラスだったので、少しシェアしてみました☆

最後に、ちょっとおもしろいと思ったのがこれ:フリードマン的思想→経済学者ミルトン・フリードマンの思想で「法律に従っている限り、企業は市場で利益を挙げるための経営を行うべき。倫理的課題について検討し、法的規制をかけるのは本来政府の役割であり、企業が対応するべき事ではない。」という概要のもの。つまりは:政府の取り締まりがない限り、利益アップのために企業は何してもOK~みたいなのりっす。合理的だけどなんかすごい極端・・・。

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2005年09月24日  投稿者 sb_adm : 03:26

芽生え:企業倫理

まだオリエンテーション中という事で本格的に授業が始まっている訳ではないんだけど、オリエンテーション期間(2週間)でやっている「企業倫理」という短期コースについてちょこっとご紹介します。

このコースについては、たった2週間で何が学べるのか?そもそも学術的な立場で倫理の理想論について学んでも意味があることなのか? と否定的だった訳なんですよ。

ハイ、確かに企業が倫理的にどうあるべきか?なんて事2週間じゃ学べません。しかも教室の中で議論する事なんて机上論に過ぎません。( ̄-  ̄ ) んーそりゃそうだ・・・

でも、企業倫理というものについて初めて考えさせらて、ちょっとした開眼 (`ロ´;)ハッ! 的体験だった。理数系の私にとって、初の哲学や倫理に触れる授業だったんだけど、すごーくおもしろかった!!!

どんな授業だったのかというとまずは①功利主義(utilitarianism)②カント的思想③ロールズ的思想について学びました。

たった2週間かじっただけなので、幼稚な理解になんだけど、私の捕らえ方は:

①功利主義→「最大多数の最大幸福」というフレーズによってよく知られていて、複数選択肢がある場合、多数派の利益増大を図る(利益と不利益をあわせて総体での利益向上を図る)選択肢を選ぶという思想ですね。

②カント的思想→イマヌエル・カントの思想で、すごく大雑把に言ってしまうと「道徳的原理は人類共通のものであり、人は自らに対しても適応されたいと思う道徳的原理に基づいて行動するべきだ。」というものです。

③ロールズ的思想→ジョン・ロールズというアメリカ哲学者の思想で、「人は『自由』に対して平等的な権利を持っているため、自らの地位や立場を放棄したマインドっセットで平等なルールや原理を築くべき。これらのルールは全人類に平等なチャンスを与え、かつ社会の最も劣位に置かれた人物の福祉を最大化するものでなければいけない」といったもの。

複数選択肢がある場合、各思想ではどう決断するか?という例で話すと・・・
一枚ピザがあったとしましょう。で、太郎・次郎・三郎の3兄弟でこのピザを分ける事になりました。ここでお母さんがきて、「太郎がピザを食べなければ、追加でもう一枚ピザを次郎と三郎にあげるよ。」と誘惑してきた場合:

①功利主義→太郎が我慢して、次郎と三郎は2枚ピザを食べる。理由:太郎がピザを食べる場合は兄弟で合計一枚 vs 太郎がピザを食べない場合は3兄弟で合計二枚 といった事になり、太郎個人はピザを食べれなくても、3兄弟の「総体」としての利益は向上するから。
②カント的思想→お母さんの誘惑に乗らない。理由:道徳原理から見て、太郎は差別されない権利を持っている。次郎も太郎もこの人類普遍的な道徳原理を尊厳するため、太郎が差別を受ける状況は避ける。この際、3兄弟は「もし太郎がピザを食べなければ・・・」など結果論は考えない。3人とも「差別されないという権利を尊重する」事のみを基準に決断する。
③ロールズ的思想→お母さんの誘惑に乗らない。理由:お母さんの誘惑を「誰かがピザを食べなければ、追加でもう一枚ピザを他の二人にあげるよ。」という視点で捉える。この場合3兄弟という「社会」の中の「最も劣位に置かれた人物(=ピザがもらえない人物)」の立場に立ち、お母さんの誘惑に乗った場合この人物への福祉が最大化されないため誘惑にのらない。又、兄弟で一枚のピザを分ける際も「誰がどの取り分をもらえるかわからないから不公平にならないように平等に分ける」という原理の基、きれいに3等分する。

(本当はこんな概要だと全然説明できない程、各思想は細かい論理や原理の上にが成り立っていて、各思想の批判も様々ある訳で深くて面白いです。興味のある人は是非検索してみてください。)

でもって、これらの思想が「企業倫理」に結びつくとこうなるんですね。。。。
①功利主義→企業は社会総体における利益向上を図るべき。
②カント的思想→企業は人類普遍的な道徳的原理に基づいた「権利」を守るべき。
③ロールズ的思想→企業は全ての人に平等なチャンスを与え、かつ、最も劣位に置かれた人物に最大限の福祉を与えるべき。


授業の後半はこれら3つの企業倫理の枠組みを使って、様々な事例を分析しました。

例えばGlaxoSmithKline(GSK)という製薬会社の事例。この会社は「Paxil」というバカ売れの抗鬱剤を出しているのですが、GSKが行った実験によると一部の結果ではこの薬が子供達に投与された場合、自殺願望を引き出す可能性があるという結果になりました。GSKはこの一部の結果について公表せず、イギリスでは医師に「Paxilを子供に処方しないように」という警告のみを出し、アメリカには報告すらしなかったのですね。で、そこで問題になってくるのは「製薬会社は自社が不利になる実験結果を公表する倫理的義務があるのか?」という事なんですよね。

①功利主義→公表すべき。総体な利益向上とは何か?とこれは難しい所なんですが。。。不利であっても全ての実験結果を公表した場合、効き目のない薬や危険度の高い薬を飲んでいる患者の利益アップ、会社としても訴訟問題の減少による利益アップ、、、と考えると総体的に利益向上になるのはこちらのケースだと思います。(但し、不利な実験結果を公表した結果、会社の利益ダウンにつながる可能性が高く、研究費等が削られ製薬の発展を妨げる、、、等の被害が余りに多ければ総体的にみて公表しない方が良いとも考えられる。)

②カント的思想→公表しなくても良い。GSKは「所有権・財産権」という人類普遍的かつ法的に与えられている権利を持っているため、FDAに開示を求められない限りGSKには所有財産である実験結果を公表しない判断をする権利がある。患者側も「薬についての情報を知る」という権利があるが、この権利は「所有件」の様に普遍的かつ法的に既に与えられているものではないため(「勝ち取らなければいけない」権利なため)、権利の優先順位として下。(カント的権利の優先順位付けの枠組みについては様々な批評があるのですが・・・。)カント的思想のおもしろい所は、「実験結果を公表しない結果、どういう影響があるのか?」といった事を考えない所かも。どういう結果になるにせよ、道徳的原理を尊厳するべきだ、と。結果主義より原理主義って事ですよね。

③ロールズ的思想→公表すべき。もっとも劣位に置かれた人物(この場合患者)の福祉を最大化する決断は「薬についてはどんな情報も公開する」ということになる。


結局キレイな答えなんてでないし、思想を学んでも現実問題は色々もっと複雑で理想論通りにいかないのよね。

むずかしぃーーーー
私のちっぽけな頭はフル回転さーーー
<(T◇T)>うぉぉぉぉぉ!!!

なんでしょっぱなから企業倫理なのか?こんな色々な思想を何故いきなり学ぶのか?というと、私が思うには常にこういう事を考えていけるリーダーになっていくきっかけを作るためだと思います。

自分「個人」としての倫理感をきちんと持っている人は多いし、生きている限り色々考えてきた事だと思うけど(少なくとも私の場合)企業倫理について考えたのは今回が初だったな。

「企業がどうあるべきか」という問いに対して自分の倫理や理念を押し付けてはだめだと思うのですよ。なぜならばほとんどの場合、企業の取る行動は株主のお金を使っている訳で、人のお金で自分個人の理念を貫くのはいけませんよね。。。。もっと色々な見方をして、株主のためにも社会のためにも何が倫理的なのか(その答えが例え個人的理念に反していても)を考えないといけないといけない。で、その際にこういう思想もあるんだよ、こうやって分析できるんだよ、みたいな事の触りとして今回の授業があったのかと思います。

企業は決断を下したり行動を取った後に、それを「倫理」とか「社会的責任」とかにこじつけがちだけど、本当は逆に倫理の面から分析して、取るべき行動や戦略を策定すべきなんですよね。

でもそれって難しいよね、、、だって色々あるじゃん。株主からのプレッシャーとかさ、個人財産アップの誘惑とかさ。(;-_-) =3 フゥ

でもそういう風に倫理の面からも少しでも考えていけるビジネスリーダーになりたいよね、、、ってちょびっと思いました。まだ芽生えただけだけどさぁ・・・ヽ(´ー`)ノ

今回は偽善者っぽい(?!)内容でごめんなさい!
でも色々考えさせられるクラスだったので、少しシェアしてみました☆

最後に、ちょっとおもしろいと思ったのがこれ:フリードマン的思想→経済学者ミルトン・フリードマンの思想で「法律に従っている限り、企業は市場で利益を挙げるための経営を行うべき。倫理的課題について検討し、法的規制をかけるのは本来政府の役割であり、企業が対応するべき事ではない。」という概要のもの。つまりは:政府の取り締まりがない限り、利益アップのために企業は何してもOK~みたいなのりっす。合理的だけどなんかすごい極端・・・。

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2005年09月22日  投稿者 AYA : 15:34

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